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村上春樹と村上龍

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#村上春樹 #村上龍 #ウォークドントラン #対談 #絶版ずっと読みたかったけれど入手できなかった本です。図書館で借りることができました。若き日の村上春樹さん、村上龍さんの対談です。

村上春樹村上龍

「ウォーク・ドント・ラン」は1981年(37年前!!!)に出版された村上春樹村上龍の対談本で、現在は文庫本にもなっていません。

ずっと以前から読みたいと思っていましたが、図書館で借りることができました。

村上春樹さんは1979年に「風の歌を聴け」でデビュー。村上龍さんは1976年に「限りなく透明に近いブルー」でデビューなので、本当にキャリアの最初の頃の対談です。

この頃、村上春樹さんは「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」を発表済み、そして「街と、その不確かな壁」(のちに世界の終わりとハードボイルドワンダーランドになる中短編)を発表したばかり。まだ「羊をめぐる冒険」も書かれていません。「鼠シリーズの完結編を書こうかと思っている」と対談の中で語っています。

村上龍さんは「限りなく透明に近いブルー」「海の向こうで戦争が始まる」の後で傑作「コインロッカー・ベイビーズ」を出版した直後の、無敵状態な頃になります。

おもしろことに、二人には色んな共通点があるんです。二人の熱心な読者なら当然知っていることですが、この共通点というのがすごく面白いです。

この頃すでにお互いを絶賛している

私がこの二人の作家に出会った頃には、すでに「出せばベストセラー」のような地位にある二人でした。しかしこの頃はまだまだ「古い文壇の価値観」からは異端扱い、よく分からない作家もどき、みたいに扱われていたようですね。

そのなかで、春樹さんと龍さんはすでにお互いの作品を絶賛しています。

春樹さんは龍さんの「圧倒的な勢い、一気に読ませてしまう小説」を褒め、龍さんは春樹さんの「抑制された文章の中に感じる優しさ、そして血や汗の匂い」を褒めます。

それは今私たちが二人の作品から感じるものであります。この頃にそれをすでに感じて言葉にしていたというのがすごい。

 

二人共、奥様の意見が強い

お二人とも、奥様が割りとキツイことを言ったり、せっかく書いた小説を「面白くない」とバッサリ切り捨てたり、、、そのあたりのエピソードも面白いです。

龍さんが購入した高級フライパンを、奥様が猫のトイレ砂を乾かすのに使っていたり。

春樹さんが小説書いているのに「洗濯物を干すほうが大事!」と奥様に言われたり。

 

二人とも、日本文学を全然しらない

太宰治読みました?」「夏目漱石読んでみたい」など、そのへんの高校生みたいな会話ですが、もちろん本を読んでいないわけではなくて、二人とも(特に春樹さん)が海外の文学ばかり読んできたということのなのですよね。

この時に春樹さんが注目しているのがスティーブン・キングというのがすごい。まだ数作しか本を出していないスティーブン・キングにすでに目をつけている。。。

二人とも、親が教師

「教師である」というということが二人を作家にさせたのではなく、逆に親の薦める本を読まなかったりしたというところが面白いですね。

村上春樹はまだ長編を書いていない

村上春樹さんといえば長編小説です。重厚で読み応えのある長編が春樹さんの魅力です(もちろん短編や中短編もすてきだけどね!)。その春樹さんがまだ本格的に長編を書いていない時代、まだジャズ喫茶(バー?)を経営している時代の貴重な話が満載で、「これからどういう小説を書いてみたいか」を龍さんと話しているんです。すごい瞬間を切り取った対談ですよね。

戦争についての言及

そして戦争についての言及もあります。

春樹さんも龍さんも、これまで小説のなかで繰り返し戦争について書いています。この頃、龍さんはすでに「海の向こうで・・・」で戦争について書いていますよね。

春樹さんの「風の歌・・」も、直接的ではありませんが、戦争の残りの香りがあります。

ここでは、「戦争に行ったから戦争知っているとか、行かなかったから知らないとか、そういう図式はやめた方がいい」という龍さんの言葉が印象的ですね。

これは今でもその図式が変わっていない世の中に、ガーンと響きます。

無防備で放り出すような対談

まだ村上龍さんは二十代、春樹さんは三十代前半でお店をやっている頃です。

世の中に対する考え方なども、今とは随分違うようですね。

安保やヒッピーに対する距離、「感性」という言葉への違和感、ジャズへの落胆、小説への考え方など、全てあっさりと語られています。

二人のエッセイなどの中で繰り返し語られるようなエピソードばかりで「新しい発見」みたいなのはありません。

しかし、まだ二人が今ほどの賞賛を得ていない頃の、無責任でいられる自由な言葉がとても瑞々しくて面白い対談だと思いました。

このあと、村上春樹さんは「羊」を書くのですから、そりゃすごいタイミングです。

 

機会があれば是非読んでみてください!

ウォーク・ドント・ラン―村上龍vs村上春樹

ウォーク・ドント・ラン―村上龍vs村上春樹

 

 

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

 
新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

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